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ランサムウェア攻撃が5年連続トップ脅威に - 企業が直面する現実とその対策

なぜランサムウェア攻撃が5年連続で最大の脅威なのか

情報処理推進機構(IPA)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2025年版」において、「ランサム攻撃による被害」が5年連続で1位となりました。この結果は、多くのセキュリティ専門家にとって驚きではないものの、一般企業や組織にとっては重要な警鐘となっています。

このランキングは約200人のセキュリティ分野の専門家や関係者による投票で決定されますが、単なる人気投票ではなく、実際の被害規模や社会的影響の大きさを反映したものと考えられます。2016年から2020年までは「標的型攻撃による機密情報の窃取」が5年連続でトップでしたが、2021年からはランサム攻撃がその座を奪い、現在に至っています。

この傾向が示すのは、サイバー犯罪者たちのビジネスモデルの変化です。以前は情報窃取が主流でしたが、現在はより直接的な金銭的利益を得られるランサムウェアへと移行しています。これは攻撃者にとって「投資対効果」が高いビジネスモデルとなっているためです。

現代のランサムウェア攻撃の特徴と進化

現代のランサムウェア攻撃は、単にファイルを暗号化して身代金を要求するだけの単純なものではなくなっています。今日の攻撃は「二重恐喝(Double Extortion)」や「三重恐喝(Triple Extortion)」と呼ばれる高度な戦略を採用しています。

二重恐喝では、攻撃者はデータを暗号化するだけでなく、事前にデータを窃取し、身代金が支払われない場合はそのデータを公開すると脅します。これにより、バックアップからの復旧だけでは解決しない状況を作り出しています。

三重恐喝ではさらに一歩進んで、被害組織の顧客やパートナーにも直接連絡を取り、二次的な脅迫を行います。これにより、被害組織は自社のシステム復旧だけでなく、レピュテーションリスクや法的リスクにも直面することになります。

また、近年の特徴として、ランサムウェア・アズ・ア・サービス(RaaS)モデルの普及があります。これは専門的な技術を持たない犯罪者でも、サービスとしてランサムウェアを「レンタル」して攻撃を実行できるようにするものです。このビジネスモデルにより、攻撃の敷居が下がり、攻撃数が爆発的に増加しています。

ランサムウェア攻撃の実態と被害規模

2023年から2024年にかけて、日本国内でも多くの大手企業や公共機関がランサムウェア攻撃の被害に遭いました。これらの攻撃による直接的な被害額は数億円から数十億円に達することもあり、間接的な損失(ブランドイメージの低下、顧客離れ、復旧作業のコストなど)を含めると、その影響はさらに大きくなります。

グローバルに見ると、ランサムウェア攻撃による被害総額は年間数兆円規模に達すると推定されています。特に医療機関や重要インフラ、製造業などが標的となるケースが増加しており、社会的影響も深刻化しています。

ある調査によれば、ランサムウェア攻撃を受けた組織の約40%が身代金を支払っているとされていますが、支払いによってすべてのデータが復元される保証はなく、約30%の組織では支払い後も完全なデータ復旧ができなかったという報告もあります。さらに、一度身代金を支払った組織は「支払い意思のある標的」として再攻撃を受けるリスクも高まります。

攻撃の入口としては、依然としてフィッシングメールやRDP(リモートデスクトッププロトコル)の脆弱性、ソフトウェアの未パッチの脆弱性が主流です。また、最近では初期アクセスブローカー(IAB)と呼ばれる、組織へのアクセス権を売買する専門の犯罪者が増加しており、攻撃の連鎖がより複雑化しています。

効果的なランサムウェア対策とレジリエンスの構築

ランサムウェア攻撃に対する万能の対策は存在しませんが、多層防御アプローチによりリスクを大幅に低減することは可能です。以下に主要な対策をご紹介します。

1. 予防的対策

  • 定期的なバックアップ: オフラインかつオフサイトでのバックアップを定期的に実施し、復元テストも行う
  • パッチ管理: すべてのシステムとソフトウェアを最新の状態に保つ
  • 多要素認証(MFA): 特に特権アカウントや重要システムへのアクセスには必須
  • ネットワークセグメンテーション: 攻撃の横方向移動を制限する
  • エンドポイント保護: 次世代アンチウイルスやEDR(Endpoint Detection and Response)の導入
  • セキュリティ意識向上トレーニング: 全従業員に対する定期的な教育

2. 検知対策

  • 24時間365日のセキュリティ監視: SOC(Security Operation Center)の活用
  • 異常検知: 通常と異なるネットワークトラフィックやユーザー行動を検知
  • ハニーポット/ハニートークン: 攻撃者の活動を早期に検知するための罠の設置

3. 対応・復旧対策

  • インシデント対応計画: ランサムウェア攻撃を想定した詳細な対応手順の策定
  • 定期的な訓練: インシデント対応チームによる実践的な演習
  • コミュニケーション計画: 内部および外部ステークホルダーへの適切な情報共有
  • 法的・規制要件の理解: 個人情報保護法やGDPRなどの規制に基づく報告義務の把握

まとめ

ランサムウェア攻撃は今後も進化し続けると予想されます。組織はこれを「いつか起こるかもしれない」ではなく、「いつか必ず起こる」ものとして準備する必要があります。特に重要なのは、技術的対策だけでなく、人的要素も含めた総合的なセキュリティ体制の構築です。

最後に、ランサムウェア攻撃を受けた場合でも、身代金の支払いは推奨されません。支払いは犯罪者のビジネスモデルを支援することになり、将来的な攻撃を助長する可能性があります。今やランサムウェア攻撃は単なる攻撃手法ではなく、犯罪者たちにとって絶好のビジネスなのです。

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