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サイバーレジリエンスの重要性と実装戦略:予防から回復力へのシフト

サイバーレジリエンスの現状と企業の認識ギャップ

近年、サイバー攻撃の頻度と複雑さが急速に増加する中、企業のサイバーレジリエンス(回復力)の重要性が高まっています。サイバーレジリエンスとは、サイバー攻撃を受けた際に、迅速に回復し、ビジネスの継続性を維持する能力のことを指します。

最近の調査によると、多くの企業が自社のサイバーレジリエンスに対して過度の自信を持っていることが明らかになりました。世界的なクラウドセキュリティ企業が実施した調査では、IT意思決定者の約半数が自社のITインフラの回復力は「非常に高い」と評価し、90%以上が現在のサイバーレジリエンス対策は効果的だと考えています。

しかし、この自信とは対照的に、同じIT責任者の約半数が6ヶ月以上サイバーレジリエンス戦略を見直していないという事実も明らかになりました。特にAIの台頭による脅威の進化を考慮すると、この状況は憂慮すべきものです。自社の戦略が最新のものであると考えているのはわずか30%程度にとどまっています。

この認識ギャップは、多くの企業がサイバー攻撃に対する本当の準備ができていないことを示唆しています。ランサムウェア攻撃やAI活用型の攻撃が日々進化する中、企業は自社の防御戦略を定期的に見直し、最新の脅威に対応できるよう調整する必要があります。

経営層の関与不足がサイバーレジリエンスを阻害する要因に

サイバーレジリエンスに対する認識と実際の準備状況のギャップの主な原因の一つとして、経営層の関与不足が挙げられます。調査によると、IT責任者の大多数はサイバーレジリエンスの重要性が高まっていることを理解していますが、それが経営の最優先事項の一つであると考えているのは、わずか30〜40%程度にとどまっています。

この優先順位付けの欠如は、サイバーレジリエンス戦略に割り当てられる予算にも反映されています。また、サイバーレジリエンス計画の責任が主にIT部門に集中しており、CISOなどのセキュリティ専門家の関与が限られていることも問題です。

サイバーレジリエンスが組織全体のレジリエンス戦略に統合されていると回答した企業はわずか30〜36%という事実も、このテーマが組織内で孤立した視点で扱われていることを示しています。

私の経験から言えば、サイバーレジリエンスは技術的な問題だけでなく、ビジネス全体に関わる戦略的課題です。経営層がサイバーレジリエンスの重要性を理解し、適切な投資をし、組織全体の戦略に統合することが不可欠です。サイバー攻撃は「もし起こるか」ではなく「いつ起こるか」の問題であり、経営層はIT部門と連携して、増大する脅威に対処できる堅牢な戦略を策定する必要があります。

予防中心からバランスの取れたアプローチへの転換

現在のサイバーセキュリティ戦略において、多くの企業が「予防」に過度に焦点を当てていることが明らかになっています。調査によると、IT責任者の約60〜65%が自社は予防を重視しすぎていると考えており、サイバーセキュリティ戦略と予算の43%以上が、攻撃発生後の対応や回復能力を犠牲にして、攻撃の防止に重点を置いています。

これは、「完全な防御は不可能」という現代のサイバーセキュリティの現実と矛盾しています。どれだけ強固な防御を構築しても、攻撃者は常に新しい脆弱性を見つけ出す可能性があります。そのため、攻撃を防ぐことだけでなく、攻撃が発生した際の影響を最小限に抑え、迅速に回復する能力を構築することが重要です。

予防に重点を置いている企業でも、サイバー攻撃の影響を封じ込めて被害を防ぐための先進的なセキュリティツールの採用は限定的です。多くの企業がまだ従来型の「城壁と堀」型セキュリティモデルに依存しており、より現代的なアプローチへの移行が進んでいないことを示しています。

バランスの取れたアプローチでは、予防策を維持しながらも、検知、対応、復旧の各段階に同等の重要性を与えます。これにより、攻撃が成功した場合でも、その影響を最小限に抑え、ビジネス継続性を確保することができます。

ゼロトラストアーキテクチャによる「設計による回復力」の実現

サイバーレジリエンスを強化するための最も効果的なアプローチの一つが、ゼロトラストアーキテクチャの採用です。従来の境界ベースのセキュリティモデルとは異なり、ゼロトラストは「信頼しない、常に検証する」という原則に基づいています。

ゼロトラストアーキテクチャは、以下の方法でサイバーレジリエンスを強化します:

  1. 攻撃対象領域の最小化:必要最小限のアクセス権限を付与し、潜在的な攻撃経路を減らします。

  2. 初期侵害の防止:すべてのアクセス要求を厳格に検証し、不正アクセスを防止します。

  3. 横方向移動の排除:マイクロセグメンテーションにより、攻撃者がネットワーク内を自由に移動することを防ぎます。

  4. データ損失の防止:機密データへのアクセスを厳密に制御し、データ漏洩のリスクを低減します。

まとめ

ゼロトラストへの移行は一朝一夕には実現しません。段階的なアプローチを取り、最も重要な資産から保護を始め、徐々に範囲を拡大していくことが重要です。また、技術的な実装だけでなく、組織文化や業務プロセスの変更も伴うため、経営層のサポートと全社員の理解が不可欠です。

サイバー脅威の状況が日々進化する中、企業は完璧な防御を求めるのではなく攻撃を受けた場合どうするかを考えることが重要です。強固な防御壁は外側からの攻撃に強いですが、内側からの攻撃に弱いです。完璧なものを求めず日々セキュリティを強化していけば、より強固なセキュリティとなるでしょう。また、何から始めればいいか分からない方は、弊社に相談するのもセキュリティを高める最初の一歩になります。

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