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サイバー攻撃発生後の全容把握プロセス - 企業が知っておくべき対応と時間軸

サイバー攻撃の全容把握はなぜ時間がかかるのか

企業がサイバー攻撃を受けた際、「被害状況はどうなっていますか?」という質問に即座に答えられることはほとんどありません。企業がサイバー攻撃を受けた場合、被害の全容把握には相当の時間を要することが一般的です。これは決して対応が遅いわけではなく、ほとんどの企業が攻撃を受けると全容把握には時間がかかってしまいます。今回は企業がサイバー攻撃を受けた場合、勤めている方は何をするのか企業はどうすべきかを解説していきます。

サイバー攻撃の調査は、まるで広大な森の中で足跡を追うような作業です。攻撃者は自らの痕跡を消すプロであり、システムの奥深くに潜んでいることも少なくありません。

例えば、攻撃者がシステム内に潜伏した期間が長ければ長いほど、調査すべきログやデータの量は膨大になります。大規模システムでは、数ヶ月分のデータを精査する必要があるかもしれません。

被害調査における3つの重要フェーズ

サイバー攻撃後の被害調査は、大きく分けて3つのフェーズで進行します。

1. 初動調査(24〜72時間) 攻撃の検知直後に行われるこのフェーズでは、攻撃の種類、侵入経路、影響を受けたシステムの特定を急ぎます。この段階では「何が起きているのか」という基本的な状況把握が目的です。どの企業も攻撃を受けると、まず不正アクセスの事実確認と影響範囲の初期評価が行われるでしょう。

2. 詳細調査(1週間〜数ヶ月) ここでは、攻撃者の活動の全貌を明らかにします。どのデータにアクセスされたのか、情報は外部に持ち出されたのか、バックドアは設置されていないかなど、綿密な調査が行われます。この段階では専門的なフォレンジックツールを駆使し、時にはバイト単位でのデータ分析も必要になります。

3. 復旧と再発防止(継続的) 被害状況が明らかになるにつれて、システムの復旧と再発防止策の実装が並行して進められます。ただし、完全な被害把握ができるまでは、暫定的な対策にとどまることも少なくありません。

あなたは「なぜもっと早く全容を把握できないのか」と疑問に思うかもしれません。しかし、拙速な判断は誤った情報発信につながり、結果的に信頼を損なう可能性があります。正確性と迅速性のバランスは、インシデント対応における永遠の課題なのです。

データ漏洩の有無を確定することの難しさ

サイバー攻撃において最も判断が難しいのが、データ漏洩の有無です。システムへの侵入が確認されても、実際にデータが持ち出されたかどうかを100%確実に証明することは、技術的に非常に困難な場合があります。

これは、次のような理由によります:

  1. ログの不足や改ざん: 攻撃者は自らの行動の痕跡を消すことがあります。ログが削除されていれば、何が起きたのかを完全に把握することはできません。

  2. 暗号化された通信: 攻撃者が暗号化された通信を使用してデータを抽出した場合、その内容を特定することは困難です。

  3. 検知の限界: すべてのデータアクセスや転送を記録するシステムは少なく、監視の死角が存在します。

「データ漏洩の可能性を否定できない」という表現が使われることが多いのは、このような技術的制約があるためです。

企業が今すぐできる準備と対策

サイバー攻撃は「いつか起こるかもしれない」ではなく、「いつか必ず起こる」ものとして準備すべきです。被害全容把握のプロセスをスムーズにするためには、事前の準備が不可欠です。

1. ログ管理の強化 適切なログ保存期間の設定と、改ざん防止策の実装は基本中の基本です。少なくとも6ヶ月分のセキュリティログを保存できる体制を整えましょう。ログは調査の命綱であり、これがなければ真相解明は困難になります。

2. インシデント対応計画の策定 「誰が」「何を」「どのように」対応するのか、明確な手順を文書化しておくことで、混乱を最小限に抑えられます。特に初動対応の24時間は極めて重要です。

3. フォレンジック調査の準備 専門家との連携体制を事前に構築しておくことで、インシデント発生時の対応速度が格段に向上します。社内に専門知識を持つ人材がいない場合は、外部の専門家との契約を検討すべきでしょう。

4. 定期的な訓練の実施 机上演習やシミュレーションを通じて、インシデント対応プロセスを定期的に検証することが重要です。実際の事態が発生した時に慌てないよう、筋肉記憶を作っておくのです。

まとめ

セキュリティは、もはや専門部署だけの問題ではありません。経営層から現場まで、全社的な「セキュリティ対策」が求められる時代です。そして、被害全容把握には時間がかかるものだという認識を持ち、その間にも適切なコミュニケーションと対応を継続できる体制づくりが重要なのです。

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