
2025年7月1日、新興プラスチックス株式会社が外部からの不正アクセスによりランサムウェア感染を受けたことを発表しました。この事件は、現代企業が直面するサイバーセキュリティの脅威の深刻さを改めて浮き彫りにしています。
今回の事例を通じて、企業がどのような対策を講じるべきかを考えてみましょう。
事件の概要と企業の対応
新興プラスチックス社の発表によると、6月18日未明に外部からの不正アクセスにより、社内の一部情報システムがランサムウェアに感染し、データが暗号化される被害を受けました。このような夜間や早朝の攻撃は、実は非常に一般的です。
攻撃者は企業の監視体制が手薄になる時間帯を狙い撃ちします。まるで空き巣が留守を狙うように、サイバー犯罪者も企業の「隙」を突いてくるのです。
同社の対応は比較的迅速でした。対策本部を設置し、外部専門家の助言を受けながら復旧対応を進めている点は評価できます。また、警察および関係機関への相談・通報も適切に行われています。
興味深いのは、現時点で情報漏えいの事実は確認されていないものの、同社がその可能性を慎重に評価している点です。これは透明性を重視したリスク管理の好例と言えるでしょう。
ランサムウェアの現状と脅威
ランサムウェアは、ここ数年で企業にとって最も深刻なサイバー脅威の一つとなっています。攻撃者はデータを暗号化して身代金を要求する手法を使い、企業の業務を麻痺させます。
最近のランサムウェア攻撃の特徴は、単純な暗号化だけでなく、二重恐喝と呼ばれる手法が主流になっていることです。つまり、データを暗号化するだけでなく、事前に盗み出したデータを公開すると脅迫するのです。
新興プラスチックス社の事例でも、現在のところ情報漏えいは確認されていませんが、企業がその可能性を慎重に評価しているのは、このような脅威の現実を理解しているからでしょう。
事業継続の重要性
今回の事件で注目すべきは、日常の受発注業務や取引先とのやり取りには影響が出ていないという点です。これは企業にとって非常に重要な成果です。
サイバー攻撃を受けた際、最も重要なのは事業継続性の確保です。どんなに高度なセキュリティ対策を講じても、100%の防御は不可能です。だからこそ、攻撃を受けた場合の対応計画が重要になります。
多くの企業がセキュリティ対策に投資する際、防御に重点を置きがちです。しかし、実際には「攻撃を受けた後の対応」こそが企業の生存を左右します。
企業が取るべき対策
この事件から学べる教訓は多くあります。まず、多層防御の重要性です。一つの防御策に頼るのではなく、複数の防御策を組み合わせることが重要です。
具体的には以下のような対策が考えられます:
技術的対策として、定期的なセキュリティアップデートの実施、ファイアウォールやアンチウイルスソフトの導入、ネットワークの監視体制の強化などが挙げられます。特に重要なのは、エンドポイント保護です。従業員のパソコンやスマートフォンが攻撃の入り口となることが多いからです。
組織的対策では、従業員への定期的なセキュリティ研修、インシデント対応計画の策定、バックアップの定期的な実施と復旧テストなどが必要です。
研修については、単発の講習では効果が限定的です。継続的な教育プログラムを通じて、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることが重要です。
管理的対策として、アクセス権限の適切な管理、ログの監視、定期的なセキュリティ監査などが挙げられます。特に重要なのは、最小権限の原則です。従業員には業務に必要最小限の権限のみを付与することで、被害の拡大を防ぐことができます。
また、新興プラスチックス社が実施したような迅速な情報開示も重要です。
まとめ
今回の新興プラスチックス社の事例は、適切な準備と対応により、攻撃を受けても事業を継続できることを示しています。
重要なのは、完璧な防御を目指すのではなく、攻撃を受けた際の被害を最小限に抑え、迅速に復旧する能力を身につけることです。そのためには、技術的な対策だけでなく、組織全体でのセキュリティ意識の向上が不可欠です。
あなたの会社は、今回のような攻撃を受けた場合の準備はできていますか?今一度、セキュリティ対策を見直してみることをお勧めします。
