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サイバーハイジーン最前線:企業の7割に潜む「非管理端末」の脅威と対策

サイバーハイジーンの現状:認知度と実施状況

サイバーセキュリティの世界では、「サイバーハイジーン」という言葉をよく耳にするようになりました。これは、私たちが日常生活で手洗いやうがいを行うように、デジタル環境においても基本的な衛生管理を行うという考え方です。具体的には、エンドポイント(PCやスマートフォンなどの端末)の状態を常に把握し、セキュリティパッチの適用や安全な設定を徹底することで、サイバー攻撃に備えるアプローチを指します。

タニウム合同会社が実施した最新の調査によると、サイバーハイジーンの認知度は依然として低く、「主要な機能を含めてよく知っている」と回答した割合は28%にとどまっています。この数字は昨年とほぼ横ばいであり、認知度向上の余地がまだまだあることを示しています。

一方で、サイバーハイジーンの実施状況については、わずかながら改善が見られます。全社規模で実施している企業の割合が昨年の32%から36%に増加しました。特に注目すべきは、従業員5万人以上の大企業では、全社規模での実施率が47%に達し、昨年の38%から大幅に上昇したことです。

企業の7割に潜む「非管理端末」の脅威

しかし、この調査で最も衝撃的だったのは、企業の約7割に管理できていない端末が存在するという事実です。具体的には、以下のような状況が明らかになりました:

  1. 企業内の端末を「完全に把握できている」と回答したのはわずか31%
  2. 「非管理端末の存在は認知しているが、正確な台数は把握していない」という回答が54%
  3. 「非管理端末の存在自体を認知していない」という回答が15%

さらに懸念すべきは、完全に把握できているという回答が昨年の37%から減少していることです。これは、企業のIT環境が複雑化する中で、すべての端末を把握し管理下に置くことがますます困難になっていることを示しています。

サイバーハイジーン運用の重要性と課題

非管理端末の増加は、セキュリティリスクの増大に直結します。管理されていない端末は、セキュリティパッチが適用されていなかったり、適切な設定がなされていなかったりする可能性が高く、サイバー攻撃の格好の標的となります。

実際、警視庁の資料によると、ランサムウェアの侵入経路となった機器の60%で、未適用のセキュリティパッチがあったことが判明しています。これは、サイバーハイジーン運用の未徹底が、直接的な被害につながっていることを示す証拠です。

こうした状況を改善するためには、サイバーハイジーン運用のKPI(重要業績評価指標)を設定し、リアルタイムな情報に基づいた管理を行うことが重要です。タニウムの調査では、87%の企業がすでにKPIを設定していることがわかりましたが、その内容と実効性については精査が必要でしょう。

効果的なサイバーハイジーン運用のためのアプローチ

効果的なサイバーハイジーン運用を実現するためには、以下のようなアプローチが推奨されます:

  1. IT資産の可視化: すべての端末を100%把握することを目標に設定
  2. 非管理端末の可視化: 非管理端末の割合を0%にすることを目指す
  3. 脆弱性の可視化: リアルタイムで脆弱性情報を把握し、迅速に対応
  4. パッチ管理: すべての端末に最新のセキュリティパッチを適用
  5. ソフトウェア管理: インストールされているソフトウェアのバージョン管理を100%実施
  6. ポリシー管理: セキュリティポリシーの遵守状況を常時モニタリング

これらの項目について具体的なKPIを設定し、達成に向けて継続的に取り組むことが重要です。例えば、「IT資産の可視化率を3ヶ月以内に95%以上にする」といった具体的な目標を立てることで、組織全体のセキュリティ意識向上にもつながります。

さらに、自社内だけでなくサプライチェーン全体のモニタリングも重要です。取引先や協力会社のセキュリティ状況が自社のリスクにも直結するため、サプライチェーン全体でのサイバーハイジーン徹底が求められます。

まとめ:サイバーハイジーンは現代のビジネスに不可欠

サイバー攻撃の脅威が日々進化する中、サイバーハイジーンの重要性はますます高まっています。企業の7割に非管理端末が存在するという現状は、早急に改善が必要な深刻な問題です。 現に我々が対応する多くのクライアント様で、非管理端末が原因と思われるインシデントは数多くあります。

サイバーハイジーンの運用は、一朝一夕には実現できません。しかし、具体的なKPIを設定し、リアルタイムな情報に基づいて継続的に改善を図ることで、着実にセキュリティレベルを向上させることができます。

私たち一人一人が、デジタル世界における「手洗い」や「うがい」の重要性を理解し、日々の業務の中でサイバーハイジーンを実践していくことが、組織全体のセキュリティ強化につながります。サイバーハイジーンは、もはや選択肢ではなく、現代のビジネスに不可欠な要素なのです。

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